なぜ定時帰りができないのか?6
昨日の続きです。
記事を深掘りしていきます。
多くの長時間労働の是正策は、始まってしばらくすると「不満感」が一時的に高まります。そこで止めてしまうケースがほとんどです。
(中略)
こうした「死の谷」の期間に、職場では地獄を見ることになります。これは痛みを伴う学び直し、「学習棄却」と呼ばれるものです。いわば新たなルーティーンを学ぶ創造プロセスと言えます。一時期は大変になりますが、いったん施策が回りだしたら職場は変わるはずです。
制度導入に痛みはつきものですが、
特にはじめの1〜2ヶ月は反発が起きやすい。
とある飲食店を営む私のクライアントの事例でいうと、
休みを増やす施策を実施しようとするも反発にあったといいます。
なるべく多くのシフトに入って稼ぎたい、
という層が多いそうでなかなか苦労したようです。
従業員のことを思って休みを増やそうとしているのに。。。
人事担当者としてはやるせない気持ちにさせられるわけです。
人間は慣れの生き物。変化には苦痛が伴います。
この「死の谷」で改革を諦めてしまうケースが多いようですがここは踏ん張りどころです。
むしろ「死の谷」を乗り越えることができれば道は開ける、と前向きに捉えて乗り越えていきたいものです。
残業削減に「魔法の杖」はない
Web上での本書への言説を見ると、「紋切り型だ」とか「今までのノウハウの寄せ集め」といった批判もありました。そうだろうなと思う反面、「皆さん、どこかで長時間労働是正を行ってくれる『魔法の杖』を求めていませんか」とも思うのです。魔法の杖を使えば残業がすぐ無くなる、といったような。残念ながら、そうした「魔法の杖」はありません。
結局は地に足つけてやっていくしかないのだ、と中原氏はいいます。
会社の規模、業界業種、会社の雰囲気など総合的に判断して必要な行動を起こしていく必要があります。
日本にある260万社すべての会社はそれぞれの個性があって、
その個性を無視して絶対的な唯一の方法を探ろうという方が理にかなっていない訳です。
具体的な方法論については後日残業学の書評で書かせて頂きます。
残業対策でドローン?
調査ではカラオケボックスに入って残業したり、会社側が職場にドローンを飛ばして残業していないか監視しているという事例も聞きました。残業してまで一生懸命仕事をしているのに、ドローンが飛んできたら、働く人はどういう気持ちがするでしょうか?
(中略)
残業という問題について議論する場合、みんな仕事で忙しいため自分の“半径1メートル”しか見えなくなるものです。学問に微力ながら力があるとすれば、引いた眼で見ることで「問題がこういう構造になっていますよ」と示すことです。後は個別具体的に自分たちの会社で施策が当てはまるか、当てはまらないかどうかを話し合ってほしい。
本書では残業対策の事例を書きました。後は自分たちの会社で何をやらなくてはいけないか、考えるべきだと思います。(他社事例の)コピペだけではうまくいかないのです。
残業を監視するためにドローンを飛ばす会社があるそうです。
そんなネタみたいなことあんまりないと思いますが、
残業していてドローンが飛んできて監視されて良い気分がする人はいないでしょう。
人事は現場の社員の気持ちを想像して、現場は会社全体の問題点を理解して、経営層はその両方の意見をくみ取って実行に移していく。他社を参考にしつつも、コピペでうまくいく訳ではないので自社にあったやり方を模索していく。
会社が一丸となって取り組んでいかなければ「定時帰り」などの施策は実現しないということがわかってきました。
明日は最終章をまとめていきたいと思います。