【書評】残業学 明日からどう働くか?どう働いてもらうか?③
昨日の続きです。
「残業学 明日からどう働くか?どう働いてもらうか?」の書評を書かせていただいています。
「昭和の残業」と「平成の残業」
本書の中ではコラムで取り上げられていましたが、
個人的には大きな気づきとなったので書かせてもらいます。
バブル経済期までの残業(昭和の残業)とバブル経済崩壊後の残業(平成の残業)では実態が違うと指摘しています。
昭和と平成の社会的なニーズや価値観の変化が、残業の意味合いを変えていっているといいます。
(p56 図表コラム1-1)
【社会背景】
昭和:洗濯機、テレビ、冷蔵庫など、ほしいものはみんな同じ。大量生産で作れば作るほど売れた。
平成:消費者ニーズが多様化し、より創造的で、相互作用的な仕事が求められている
【労働者】
昭和:ほとんどが男性正社員
平成:多様化が進み、男女、世代、仕事観はバラバラ。外国人も増加中。
【雇用条件】
昭和:新卒入社、年功序列、終身雇用
平成:転職者や雇用形態の違う社員も多く、なによりも人手不足
【家庭環境】
昭和:家庭、教育、介護、地域活動など仕事以外のことはすべて専業主婦の妻にお任せ
平成:共働き家庭も多く、育児、介護を行いながらも働く人も増加
【職場】
昭和:全員で一つの仕事を完成させる。ワイワイと仕事をするため、残業に一体感があり終わると達成感があった。(中略)
平成:仕事が個業化しており、多くの人が残業をしていても静か。それぞれ別の業務にあたっていて一体感がない。(中略)
この表は日本の現状を的確で端的に表していてわかりやすいなと思いました。
モノがなかった時代はまずはそのモノを手に入れることにみんな必死でした。
しかし今はモノは簡単に手に入ります。そこでより独創的で差別化したものが求められる時代になりました。より独創的なものを作りたくても、会社の枠に囚われていてはなかなか新しい発想は生まれないでしょう。一つの環境に縛られずに様々な情報ソースから学ぶ機会を設ける、という必要性が高まっています。つまり仕事外の時間の使い方を変えていかないと、会社で成果を上げられなくなっているということです。
また女性も働くようになったという意味で、労働者の質の変化も見過ごせません。
専業主婦の妻が家庭を守り、夫が仕事で金銭を稼ぐ、というモデルが一般的でしたが(少なくとも私が物心つく平成一桁の時はこれが普通だったと思います。)
その価値観は薄れています。
私は約1000名近い労務管理をしていますが、この仕事を始めて一番驚かされたのは専業主婦の圧倒的少なさです。
本来の子供の教育を考えるのであれば、母親は子供と長い時間をともに過ごして愛情を注いだ方が良いといわれています。ですので個人的には専業主婦に賛成の立場に立ってます。
しかし現実はそうもいっていられません。
終身雇用が約束されていない、家計を圧迫する上がり続ける税金、将来の年金も十分にもらえるかわからない老後不安。
そんな不安の中、育児をしながら、少しでも家計の足しになれば、という思いでパートに出て働くママ。
このような社会的な不安も相まって共働き世代が増えているという現状があります。
その一方で女性の社会進出が進んでいるかといえば、まだまだ十分ではない、という側面もあるでしょう。幸いなことに、テクノロジーの発展によって、職場に行かななくても仕事ができる環境が徐々に整えられてきています。家で仕事ができれば、育児をしながら仕事ができるようになります。また子連れOKな会社も徐々に増えてきています。育児と仕事を一体のものとして考えて、働くママをサポートしていくという取り組みは今後も進んでいくでしょう。
時代の変化と私たちの働き方について、を考える上でとても参考になるコラムでした。